「日本の終末医療」のこと
日本の終末医療は諸外国に比べて遅れを取っているのが事実です。ホスピス施設や緩和ケア病棟などが需要に対して不足している上に、在宅ケアの支援体制の整備も遅れています。それでも、高齢化社会の進む日本では需要は増えることはあっても減ることはありません。今後、ますます必要性の増してくる終末医療について考えるサイトを立ち上げてみました。このサイトへのお問い合わせはメールフォームよりお願いいたします。
日本では8割程度の人が病院で亡くなっています。延命こそが医療の役割という考え方が病院で亡くなる人が多い原因と思われます。しかし、最近ではホスピスや緩和ケア病棟の登場で、終末医療のあり方や考え方に変化が出てきています。ここでは、終末医療の起源とそのあり方の変化、緩和ケアについての知識などをご紹介していきます。
治る見込みのない病気の患者とその家族の心身の痛みや苦しみを緩和することを目的とするケアを「緩和ケア」や「ホスピス」と呼ばれていますが、この起源は1960年代のイギリスだと言われています。イギリスの医師シシリー・ソンダース博士が末期患者との交流を通じて、死を目前にした人にどうすれば安らぎを与えることができるのか、安堵感を覚えてもらえるのかを考えたことが原点なのです。ソンダース博士は緩和ケアのあり方として次の5点を強調しています。
1.患者を一人の人間として扱うこと
2.患者の苦しみをを和らげること
3.不適切あるいは不必要な治療や検査はしないこと
4.患者の家族もケアすること
5.チームで患者のケアにあたること
この5点が緩和ケアやホスピスの原点であり、終末医療のあり方の指針でもあります。
日本では緩和ケアによる診療対象は原則としてがんとエイズとしていますが、外国では重度の糖尿病や心臓病など治癒の見込みのない病気を幅広く対象としています。日本でも、今後診療対象が広がる可能性があります。
緩和ケアの具体的な内容ですが、患者の苦しみ、とりわけ疼痛を取り除くために医療用麻薬(モルヒネ)を使用することが多いです。医療用麻薬は痛みを脳に伝える神経の働きを抑制する効果がありますので、痛みの程度に合わせて、注射や錠剤、粉末などの形態で使用量をコントロールしていきます。
患者を一人の人間として扱うという観点では、緩和ケアで入院中の患者の生活の質を重視して、周囲に迷惑を掛けない範囲で患者が望む場合にはアルコールや喫煙を許可したり、音楽や映画鑑賞などのイベントへの参加を促したりして、できるかぎり日常生活に近い環境を実現するようにしています。
こうした緩和ケアやホスピス病棟ですが、日本は諸外国に比べて遅れを取っています。ある調査によると、末期がんで余命わずかとなった場合、自宅で療養をして、入院が必要な場合は緩和ケア病棟に入院したいと考えている人が4割ほどいましたが、実際には、がんで自宅あるいは緩和ケア病棟で亡くなった人は16%ほどでした。このような日本の実態については別途ご紹介いたします。
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緩和ケアチームの看護師はチームの要であると同時に直接患者さんやその家族をケアするキーパーソンでもあります。患者さんと接する時間が最も長く、その肉体的苦痛や精神的不安をいち早くキャッチしてケアするとともに、家族の不安や心労をケアする役割も担っています。
現在の日本では、ほとんどの人が一般の病院で最期を迎えます。ある調査によると6割超の人は自宅で最期を迎えたいと考えていますが、実態は年に8%程度の人しか自宅で最期を迎えることができていません。これは、在宅での終末医療を支援する体制ができていないためです。今後、終末期の患者さんの死の質を高めていくためにも、在宅医療の整備が必要です。