「日本の終末医療」のこと
日本の終末医療は諸外国に比べて遅れを取っているのが事実です。ホスピス施設や緩和ケア病棟などが需要に対して不足している上に、在宅ケアの支援体制の整備も遅れています。それでも、高齢化社会の進む日本では需要は増えることはあっても減ることはありません。今後、ますます必要性の増してくる終末医療について考えるサイトを立ち上げてみました。このサイトへのお問い合わせはメールフォームよりお願いいたします。
終末医療におけるホスピスの起源がイギリスにあることを説明いたしましたが、その提唱者であるソンダース博士は緩和ケアのポイントを5つ上げています。そのうちの一つに「患者のケアはチームであたること」とあります。なぜ緩和ケアにはチームで対応することが必要なのでしょうか?その要諦をご説明いたします。
緩和ケアの対象となるのは、痛みや吐き気といった体の症状と気分の落ち込みや不安感などの精神的なつらさとなります。その肉体的な苦痛と精神的なつらさを緩和するためには単独の医師での対応は困難なため、チームで対応することが求められるのです。緩和ケアチームは、基本的には体の症状を担当するペインクリニックまたは緩和ケア専門の医師と、精神的なつらさを担当する精神科などの医師を中心に、それぞれ専従の看護師と薬剤師、ソーシャルワーカー、臨床心理士などで構成されます。
ここでいう専従の看護師は、末期がん患者さんに対するチームならば、がん看護専門看護師などの専門の資格を持った看護師で、緩和ケアチームの要となって、医師、患者さんとその家族、緩和ケアチームをつなぐ役割を果たします。薬剤師は、患者さんの症状に応じた緩和ケアとそれに使用する薬に習熟していることが必要とされます。ソーシャルワーカーは、治療以外の部分で、医療費や医療制度、転院や退院後の生活環境の整備、社会生活のサポートを担当します。
緩和ケアは末期がんなどで治癒の見込みのない患者さんにとって終末期のケアと捉えられがちですが、現在は、終末医療に限らず、がんなどの治療中のつらさを軽減させるために、がんと診断されたときから緩和ケアを行うべきだと考えられています。がんなどの生命に係わる重篤な病気に対して前向きに治療に臨むためには、病気のつらさを抱え込むことなく、積極的に緩和ケアを受けて、心身のつらさを軽減していくことが大切です。そういった意味でも、終末医療に限定せずに初期の治療から緩和ケアについて相談し、活用することも重要です。
緩和ケアチームが実際に心身の症状を和らげる方法をご説明します。がんの体の痛みを和らげる方法には消炎鎮痛薬、医療用麻薬(オピオイド)などの鎮痛薬の使用する方法、骨に生じたがんの痛みに対する放射線治療、神経を圧迫しているがんを小さくする手術、痛みの原因となっている神経に直接注射する神経ブロックなどがあります。神経ブロックは、元来は椎間板ヘルニアなどの治療法として知られていましたが、がんの痛みの治療でもよく行われています。
さらに、患者さんが抱えるつらさには、不安や気分の落ち込みなど精神的なもの、仕事や経済面など社会的なもの、人生や死後のことなどのスピリチュアルなものなどがあります。こうしたつらさを抱える患者さんには、まず専従の看護師が話を聞き、引き続いて、緩和ケアチーム内の精神科の医師、ソーシャルワーカー、臨床心理士などが専門的な対応を行います。
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緩和ケアチームの看護師はチームの要であると同時に直接患者さんやその家族をケアするキーパーソンでもあります。患者さんと接する時間が最も長く、その肉体的苦痛や精神的不安をいち早くキャッチしてケアするとともに、家族の不安や心労をケアする役割も担っています。
現在の日本では、ほとんどの人が一般の病院で最期を迎えます。ある調査によると6割超の人は自宅で最期を迎えたいと考えていますが、実態は年に8%程度の人しか自宅で最期を迎えることができていません。これは、在宅での終末医療を支援する体制ができていないためです。今後、終末期の患者さんの死の質を高めていくためにも、在宅医療の整備が必要です。